伊豆産原木しいたけとは

伊豆産原木しいたけの歴史(清助どんこの誕生)

椎茸の歴史は古く、清良記(1564年)に食用野菜として椎茸が書かれており、さらに古くは日本最古の辞典「本草和名」(718年)に木菌(椎茸のこと)と記され、薬用効果が紹介されています。

伊豆では江戸時代から栽培が進み、伊豆の茸師の人々が栽培の方法を全国に指導しました。

寛保元年(1741年)、門野原村の石渡清助が天城山嶺で椎茸の人工栽培を始め、文政2年(1819年)には伊豆の斎藤重蔵が竹田藩で椎茸栽培を指導。

明治15年(1882年)門野原村の石渡秀雄が椎茸貯蔵箱を考案し、明治29年(1896年)には同じく石渡秀雄が吉奈の棚場山に私立椎茸製造伝習所を設立。明治36年(1903年)石渡秀雄が「実地指導椎茸の作り方」を刊行するなど、日本の椎茸栽培に多大な功績を遺しました。

これら名を残した人々と、伊豆の多くの椎茸業者の努力により伊豆の椎茸は全国に名を知られ、明治時代になると、静岡県産の乾しいたけが博覧会に多数出品されるなど代表的な生産地となる基礎が築かれました。

※「伊豆半島ジオパーク」構想により、地学的な情報が整理され、伊豆の椎茸産業の特殊性が説明可能となりました。こちらをご覧ください。 ⇒ 伊豆半島ジオパークから解き明かす、高品質産地成立の秘密

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伊豆産原木しいたけのおいしさ

こだわりの原木栽培で、自然な風味

伊豆の椎茸はクヌギやコナラなどを伐採した原木に菌を植え、林間地を利用して栽培されます。自然栽培で育った椎茸の味は、自然で本物の味。

安心して食べられる伊豆ブランド

中国産椎茸の残留農薬問題など、食品に対する安全が問われている現代。伊豆の椎茸は通常、農薬や肥料を使わず栽培されるので、安心・安全!

形も味も高品質!伊豆の椎茸

伊豆の乾椎茸は、明治期から国内外の博覧会に出品され、近年でも全国規模の乾椎茸品評会(全国乾椎茸品評会及び全農乾椎茸品評会)で農林水産大臣賞を日本一受賞(平成27年時点で126回)しており、恵まれた気象条件と長い歴史の中で育まれた確かな技術により、形も味も高品質な逸品をつくり続けています。

「清助どんこ」は最高級ブランド

はじめて椎茸の人工栽培を始めた石渡清助にちなみ、伊豆産で原木栽培の乾椎茸の中でも基準に合格した最高品質のものに「清助どんこ」のブランド名を冠しています。

伊豆産原木椎茸には「清助しいたけ」のブランドを付与しています。

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乾しいたけと生しいたけのちがい(しいたけの栄養素)

生しいたけ

生しいたけは野菜として流通していて八百屋さんの取り扱い。

生しいたけは一年を通じて流通量を安定させるために菌床栽培が多く、収穫期が限定され一時に大量に採れる原木栽培の生しいたけは貴重です。味がマイルドで形や大きさが一定の菌床栽培もの、肉厚で香りや歯ごたえが強い原木栽培とそれぞれ特徴があります。お料理によって使い分けるのが上手な使い方です。

原木栽培と菌床栽培

原木栽培はクヌギやコナラなどの木に菌を植え付け、森の中などで1年半から2年ほどかけてゆっくりと育てる方式。

菌床栽培はオガ粉に「ふすま」や「ぬか」、水などを混ぜて固めた培地に菌を植えて、温度や湿度が万全な環境で育てる方法。

原木栽培のしいたけは肉厚で、しいたけ本来の香りや歯ごたえが強く、菌床栽培は色や形が一定で味もマイルドという特徴があります。

乾しいたけ

乾しいたけは乾物なので、乾物屋さんの取り扱い。昆布やかつお節と並んで乾しいたけは定番商品です。

乾しいたけ乾しいたけは戻す手間がかかりますが、香りや旨味の成分が生椎茸を上回るという特徴を持っています。また、上手に戻すと、しいたけの味はもちろんのこと、非常に美味しい「だし」が取れます。

乾しいたけの美味しさのひみつ

乾しいたけには様々な栄養素がたくさん含まれています。

骨を丈夫にするビタミンDや、コレステロールの低下に効果があると言われているエレタデニンを豊富に含みます。

また、乾しいたけの旨味の秘密はグアニル酸。これは鰹節のイノシン酸、昆布のグルタミン酸とともに日本料理の「三大旨味成分」と言われています。

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生産者が語る伊豆原木しいたけの魅力 — 浅香博典さん47歳

土肥の気候が育てる高品質な乾しいたけ

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伊豆市土肥地区のしいたけ生産者 朝香博典さん47歳

静岡県伊豆市土肥でおじいさんの代からしいたけ生産をはじめ、博典さんで3代目 気候にあった品種を選ぶことや使用する原木には特にこだわりがあるという。

全国乾椎茸品評会で農林水産大臣賞等多くの受賞がありますが、 「丁寧な作業を心掛けていますが、特別なことはしていません。土肥の気候は、品質の高いどんこの生産に適しているんです。」と朝香さんは言います。
「伊豆の風土と心意気が生み出すしいたけの味をみなさんに知っていただきたい。」そう熱く語ってくれました。

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乾しいたけのどんこには、いわゆる普通の「どんこ」、「茶花どんこ」、「天白どんこ」等の種類があります。

「どんこ」は、傘の肉が厚く全体が丸みを帯びていて、表面がつるっとしています。

「茶花どんこ」と「天白どんこ」は、傘の表面に亀裂が入っています。淡い褐色の亀裂が花状に割れるものが「茶花どんこ」、割れ目が鮮やかな白色のものが「天白どんこ」です。

天白どんこは全体のわずか1%程度しかできないとても貴重な乾しいたけです。

今年とれた天白どんこを見せてもらうと、傘の亀裂は白色で、うらのヒダは淡い黄色でした。「この色が品質の高さの証明です」と教えてくれました。

こだわりの原木栽培

しいたけ栽培に使う原木は、コナラとクヌギがありますが、土肥ではクヌギが多く使われます。暖かい土肥の気候で育ったクヌギは年輪の幅が広く、樹皮が厚くフカフカしています。その厚い樹皮を突き破って出てくるしいたけは、力強く育ちます。そこに土肥の「海風」がほどよくあたり、品質の高いどんこが出来上がります。海あり山あり、そして豊富な原木がありと様々な条件を満たしている土肥地区はしいたけづくりに最高の場所といえます。

朝香さんのしいたけ栽培には、さまざまな工夫があります。

自宅の横に広がるホダ場の上を見ると、たくさんの藤の木のつるに覆われています。近年ではビニールハウスの中でしいたけを採取することも多いですが、朝香さんのところではまさに「藤の木ハウス」といった感じです。冬は葉が落ち適度に明るく、夏は一面に葉が覆い、日蔭を作ることで直射日光からほだ木を守ってくれます。

また、しいたけはふつう灯油等で乾燥させますが、朝香さんは発生のピーク時期には薪を燃やす乾燥室も使って24時間体制で乾燥を行います。薪を使うことで燃料費の節約にもなるとのこと。乾燥の温度はとても重要で、温度管理に朝香流の秘密があるそうです。

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産地の発展に向けて

朝香さんは、毎年、研修生を受け入れる等担い手の育成にも力を入れています。地域には、朝香さんを含めた若い世代のしいたけ生産の後継者は少なくなりましたが、「地域全体で元気になれば」と希望を語ってくれました。

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生産者が語る伊豆原木しいたけの魅力 — 山口茂さん42歳

地域の若手しいたけ生産者

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伊豆市中伊豆地区のしいたけ農家 山口茂さん42歳。

父親の代からしいたけ生産をはじめ、茂さんで2代目。後継者不足と言われるしいたけ生産者の中で、42歳の山口さんは若手といえます。

1年365日、毎日休みなく行う大変な仕事ですが、しいたけ生産を始めたきっかけを聞いてみると「おやじが築きあげてきたものを、自分の代でつぶしたくなかった。はじめは親孝行のつもりでした。」と話してくれました。

地域でも後継者が不足していますが「自分たちしいたけ生産者が高級車でも乗り回していれば、後に続く後継者も出てくるかな・・・(笑)」と明るく笑い飛ばしながら語ってくれました。

日本一の原木しいたけ栽培

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しいたけの栽培方法は「菌床栽培」と「原木栽培」の2種類があります。一般的にスーパーマーケットで販売されている生しいたけのほとんどは菌床栽培です。

山口さんをはじめ、伊豆地区のしいたけはほぼ原木栽培です。日本のしいたけ栽培は、江戸時代に伊豆から発祥したという説もあります。しいたけ原木栽培は、ホダ木に菌を打ち、1年半かけてしいたけが出てきます。

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時間もかかるうえ気候に左右されてしまいますが、伊豆地区のしいたけ生産者は原木栽培にこだわっています。

「原木栽培発祥の地という伝統を守りたい」「肥料や農薬を使わない食材で、食べてみれば、味、香り、すべてが違う」と自信を持って話してくれました。こだわりと伝統の技でつくられる「清助しいたけ」は、今や全国で知られるしいたけとなっています。

里山を守るしいたけ栽培

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原木しいたけ栽培は、里山の環境保全にも一役かっています。

原木は、里山の原木林から生産されますが、里山は人間が手を入れ資源を循環させることで良好な環境を保っています。大きくなりすぎた木は萌芽(ほうが)しにくく更新が難しくなります。里山は、そのまま手を加えずにしておけばよいというものではないそうです。

「山の木も更新することが大事」と山口さんは言います。そこで自分たちで木を伐り、切り株から出た芽を育てもう一度原木林を再生させています。

「原木がいいものでないと、いいしいたけもできない」と山口さん。良好な原木林づくりも産地を守るために必要なのです。

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しいたけ用語集

  • ほだ木
    植菌済みの原木のこと。
  • ほだ場
    しいたけを発生させたり、ほだ木を休養させるため、ほだ木を配列しておく場所。林の中に配列する場合は「林内ほだ場」、ハウスなどの場合は「人口ほだ場」と言われる。
  • 原木
    きのこ栽培に使用する木。長さ1m前後の丸太で、植菌し、しいたけ菌を蔓延させる。
  • 植菌(菌打ち)
    しいたけの原木栽培の工程の一つ。種菌(種駒、鋸屑菌)を原木に植え付けること。接種ともいう。
  • 玉切り
    しいたけの原木栽培の工程の一つ。伐採し、葉枯らしを終えた原木を栽培目的に合わせて一定の長さに切ること。
  • 葉枯らし
    しいたけの原木栽培の工程の一つ。葉干しともいう。伐採した原木の水分を抜いて枯死させるため、枝葉のついたままで乾燥すること。
  • 仮伏せ
    しいたけの原木栽培の工程の一つ。植菌後のほだ木のしいたけ菌糸の活着を促すため、枝葉や寒冷紗などで覆い温度、湿度を保たせ行われる作業
  • 本伏せ
    しいたけの原木栽培の工程の一つ。仮伏せ後、活着したしいたけ菌をほだ木中に蔓延させるための作業で、「伏せ込み」、「寝せ込み」、入れ木とも言う。
  • ほだ起こし
    しいたけの原木栽培の工程の一つ。本伏せ後、しいたけが発生、採取しやすいようにほだ木をほだ場に移動し配列する作業で、「ほだおろし」「立て込み」ともいう。
  • 天地返し
    ほだ木の上下をひっくり返す作業。
  • 清助しいたけ
    伊豆産原木しいたけのブランド名の一つ。 伊豆産の原木栽培の乾しいたけに「清助しいたけ」のブランド名をつけて販売している。なかでも最高級品質の物を「清助どんこ」言う。 清助(せいすけ)は、江戸時代に伊豆市で日本初のしいたけの人工栽培を行ったと言われる石渡清助の名をとったもの。
  • 清助どんこ
    伊豆産原木しいたけのブランド名の一つ。 伊豆産の原木栽培の乾しいたけのうち、最高級品質のどんこに「清助どんこ」のブランド名をつけて販売している。平成23年度に「しずおか食セレクション」に認定された。
  • しずおか食セレクション
    静岡県の農林水産物の中から、全国や海外に誇りうる価値や特長を備えた商品を、県独自の認定基準に基づいて認定する制度。
    HP:https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-110/shizuoka_syoku_selection/
  • どんこ
    乾しいたけの形状による区分の一つ。晩秋から中春に肉厚のしいたけを5~6分開きで採取し乾燥したもの。肉質が充実しており含有水分が少ないので、乾燥歩留まりが良い。高級品として扱われる。花どんこ、上どんこ、など4種に分かれる。
  • 茶花どんこ
    乾しいたけの形状による区分の一つ。かさの表面に多数の亀裂があり、亀裂部が茶褐色のどんこ。
  • 天白どんこ
    乾しいたけの形状による区分の一つ。かさの表面に多数の亀裂があり、亀裂部が白いどんこ。
  • こうこ
    乾しいたけの形状による区分の一つ。どんこのやや開いたもの。
  • こうしん
    乾しいたけの形状による区分の一つ。かさが7~8分開きで採取し乾燥したもの。上、並、下、大、中、小に分かれる。
  • 日和子
    雨に合わない水分の少ない状態のしいたけを指す。
  • 雨子
    雨にあって水分を多く含んだ状態のしいたけを指す。
  • 春子
    春に発生するしいたけ。
  • 秋子
    秋に発生するしいたけ

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