静岡県景観賞受賞!『伊豆のパッチ状里山林の風景-歴史的な椎茸の森-』
伊豆の椎茸産業が形成してきた里山林の景観が、『第7回静岡県景観賞』(平成26年度)において、田園・農山漁村部門「優秀賞」を受賞しました。(全応募82件中)
※詳細は >> 県HPを参照
概要
伊豆半島の標高400m以下には、独特なパッチ状の里山林が大面積で広がっています。特に伊豆市内がその中心地域となっており、面積は5,000ha程度と推定されます。
この森は主にクヌギ・コナラからなる落葉広葉樹の森で、国内最古の椎茸栽培の歴史(270年以上)を持つ地域の生産者が、「椎茸原木林」として何世代にもわたって連綿と継承してきたものです。伏場・収穫場として一体的に利用される周辺のスギ・ヒノキ林も含め、地域の営みと一体となって存在する本来の「里山林」の姿であり、現代まで動体保存されている貴重な例として文化財的な価値を持ちます。
この伊豆の里山林から産する椎茸は高品質なものとして知られ、特に品質の高い乾椎茸は「清助どんこ」と呼ばれ、「しずおか食セレクション」にも認定される農芸品となっています。
景観上のPRポイント
特に紅葉から新緑までの季節は、スギ・ヒノキ林とのコントラストが明瞭です。秋の紅葉、冬の朽葉、春の萌黄、夏の濃緑と、その四季の彩りは観光地伊豆の情緒的・文学的イメージを背景として支えてきました。
ここでは、切株から生える萌芽により森林を再生させる循環利用(15~20年周期で伐採)が永年行われており、伐採面積が小規模(平均0.5ha程度)であるため、景色として眺めると、草地~壮齢林までの様々な成長段階の原木林及びスギ・ヒノキ林が、パッチ状の模様を成す独特な景観を呈しています。
この多様な森林環境は豊かな生態系を育んでおり、全国的に激減し絶滅危惧種に指定されているキンランやウラナミアカシジミも、この森では見ることができます。
景観形成の過程
伊豆は「椎茸栽培の祖」と言われる石渡清助が1741年に椎茸栽培を始めて以来の歴史的な椎茸産地です。また木炭の一大産地でもあったことから、多くの落葉広葉樹の原木林が守られ、残されてきました。戦後のスギ・ヒノキの大造林時代を経てなお、この原木林を含む伊豆市の広葉樹林は、全森林のおおよそ半数を保っています(県平均は30%程度)。
高度経済成長期を迎え薪炭需要が激減すると、椎茸産業がその森と山村労働力を引き継ぎ更に発展していきました。
審査会における評価ポイント
特に、椎茸の原木林、その他の伐採地及び周辺のスギ・ヒノキ林が、一体的に利用され手入れが行き届くことで、当地独特のパッチ状の里山林が形成されている点がされました。
表彰式
平成26年12月17日(水)に、静岡音楽館AOI(静岡市葵区)において表彰式が行われ、「田方椎茸生産組合連合会」に賞状と記念プレートが授与されました。
※賞状と記念プレートは、県きのこ総合センターで展示しています。
受賞 | 優秀賞(田園・農山漁村部門) ※優秀賞は4部門に各1。優秀賞の中から最優秀賞が選ばれる |
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受賞地区名 | 伊豆のパッチ状里山林の風景 - 歴史的な椎茸の森 - |
受賞者名 | 田方椎茸生産組合連合会 |
応募者 | 県東部農林事務所(森林整備課) |
代表的なパッチ状景観